平成29年度税制改正で、相続税の財産評価における「広大地」が「地積規模の大きな宅地」に変わりました。
「地積規模の大きな宅地」は従前の「広大地」と比べて、大きく2つの点で変わりました。

1つ目は、適用要件が変わったこと
2つ目は、評価方法が変わったこと

です。

前回は適用要件についてでしたが、今回は評価方法についてです。

従前の「広大地」の評価方法は次のとおりでした。
路線価×広大地補正率(※)×地積
※広大地補正率=0.6- 0.05×広大地の地積/1,000㎡(ただし、広大地補正率の下限は0.35)

上記の従前の「広大地」の評価方法は、地積の大きさは評価に考慮されているものの、その広大地の形状が全く考慮されておらず、実際の取引価格と「広大地」による相続税評価額とが大きく乖離することがありました。

これに対し、改正後の「地積規模の大きな宅地」の評価方法は次のとおりです。
路線価×奥行価格補正率・不整形地補正率など×規模格差補正率×地積
※規模格差補正率=(A×B+C)/A ×0.8
A=地積規模の大きな宅地の地積
B、Cは以下のとおり

<三大都市圏に所在する宅地>

        地区区分
地積
普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
500㎡以上1,000㎡未満 0.95 25
1,000㎡以上3,000㎡未満 0.90 75
3,000㎡以上5,000㎡未満 0.85 225
5,000㎡以上 0.80 475

<三大都市圏以外に所在する宅地>

        地区区分
地積
普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
1,000㎡以上3,000㎡未満 0.90 100
3,000㎡以上5,000㎡未満 0.85 250
5,000㎡以上 0.80 500

例えば、大阪府下の普通住宅地区の路線価200千円の場所に所在する地積が2,500㎡の形状の良い(ほぼ正方形、奥行価格補正率0.89)宅地の場合
従前の「広大地」: 200,000円×0.475×2,500㎡=2億3,750万円
改正後の「地積規模の大きな宅地」: 200,000円×0.89×0.744×2,500㎡=3億3,108万円

このように、改正後は同じ土地でも評価額にかなりの差が生まれます。
地積が大きく、形状の良い土地は改正後に評価額が上がります。
必ずそれぞれの評価額を算出し、検討しておく必要があります。

「地積規模の大きな宅地」に改正されるのは、平成30年1月1日以降の相続・贈与からです。
つまり、平成29年中の贈与であれば、従前の「広大地」による評価方法が使えることになります。
上記のように、改正後の「地積規模の大きな宅地」による評価方法となると評価額が上がる土地については、平成29年中に、例えば精算課税制度による生前贈与などを検討する必要があります。

ただし、生前贈与をする場合は、①登録免許税や不動産取得税などの流通税が相続による取得に比べて高額になる ②小規模宅地等の評価減の特例を使う予定である土地の場合は、生前贈与をすると使えなくなる などのデメリットもあるので注意が必要です。

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豊中市、大阪市、八尾市を中心に活動している税理士法人ライトハンドです。
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