事業や不動産賃貸業を営んでいる個人が消費税の課税事業者である場合、その事業用の建物を譲渡した際には、その建物にも消費税が課されます。

参考:国税庁HP No.3240 事業用建物等を譲渡した場合の消費税|国税庁 (nta.go.jp)

この場合に、その事業(事業所得)や不動産賃貸業(不動産所得)において、消費税の経理処理を税込経理にしているか税抜経理にしているかで所得税・住民税の負担が変わります。

例えば、税抜1億円で建物を譲渡する場合、

①税抜経理の場合
建物の譲渡に係る収入は税抜で1億円となりますので、消費税額が譲渡所得の所得金額に影響を与えることはありません。
一方、事業所得や不動産所得においては、仮受消費税と仮払消費税の差額を納付するだけですので消費税額が事業所得・不動産所得に影響を与えることは原則としてありません。

②税込経理の場合
建物の譲渡に係る収入は税込で1億1,000万円となります。
一方、事業所得や不動産所得においては、納付する消費税額が租税公課などに計上されることになります。
つまり、この場合、建物分の消費税額1,000万円は譲渡所得で収入となり、一方で事業所得や不動産所得において消費税額1,000万円が経費となることになります。

参考:国税庁HP No.6931 消費税等と譲渡所得|国税庁 (nta.go.jp)

そうすると、税込経理の場合、譲渡所得が1,000万円増え、事業所得・不動産所得(つまり総合所得)が1,000万円減ることになります。

譲渡所得(長期)は、所得税・住民税で20.315%ですので、仮にその個人の方の総合課税の税率がこれよりも高い場合は税込経理が有利に、低い場合は税抜経理が有利になることになります。

●総合課税の税率が所得税・住民税で43.693%の場合
譲渡所得が1,000万円増えることによる所得税・住民税は2,031,500円
総合所得が1,000万円減ることによる所得税・住民税は▲4,369,300円

●総合課税の税率が所得税・住民税で15.105%の場合
譲渡所得が1,000万円増えることによる所得税・住民税は2,031,500円
総合所得が1,000万円減ることによる所得税・住民税は▲1,510,500円

 

相続対策などで不動産を動かすことはよくあります。消費税のことが意外と漏れがちですので細かい部分まで注意が必要です。

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