税務上の繰越欠損金等を有する会社(欠損等法人)の株式を取得することで、当該欠損等法人の発行済株式等の総数等の50%超の株式等を直接又は間接に保有する(特定支配関係を有する)こととなる場合、特定支配関係を有することとなった日(特定支配日)以後5年を経過した日の前日までに次の事由に該当するときは、その欠損等法人が有していた繰越欠損金が使えなくなりますので、留意する必要があります。

①欠損等法人が特定支配日直前において事業を営んでいない場合において、当該特定支配日以降に事業を開始すること
②欠損等法人が特定支配日直前において営む事業(旧事業)の全てを当該特定支配日以後に廃止し、又は廃止することが見込まれている場合において、当該旧事業の当該特定支配日の直前における事業規模(売上金額、収入金額その他の事業の種類に応じた一定の基準により判定。以下同じです。)のおおむね五倍を超える資金の借入れ又は出資による金銭その他の資産の受入れ(合併・分割によるものも含みます。)を行うこと
③株式を取得する者又はその関連者が、これらの者以外からの欠損等法人に対する債権で一定のもの(特定債権)を取得している場合(特定支配日前に特定債権を取得している場合を含み、当該特定債権につき当該特定支配日以後に債務免除等を行うことが見込まれている場合等を除きます。)において、当該欠損等法人が旧事業の当該特定支配日の直前における事業規模のおおむね五倍を超える資金借入れ等を行うこと
④上記①②の場合、又は上記③の特定債権が取得されている場合において、当該欠損等法人が自己を被合併法人とする適格合併を行い、又は当該欠損等法人(他の内国法人との間に当該他の内国法人による完全支配関係があるものに限ります。)の残余財産が確定すること
⑤欠損等法人が特定支配関係を有することとなったことに基因して、当該欠損等法人の当該特定支配日の直前の役員(社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者に限ります。)の全てが退任(業務を執行しないものとなることを含みます。)をし、かつ、当該特定支配日の直前において当該欠損等法人の業務に従事する使用人(旧使用人)の総数のおおむね百分の二十以上に相当する数の者が当該欠損等法人の使用人でなくなった場合において、当該欠損等法人の非従事事業(当該旧使用人が当該特定支配日以後その業務に実質的に従事しない事業をいいます。)の事業規模が旧事業の当該特定支配日の直前における事業規模のおおむね五倍を超えることとなること(事業規模算定期間における非従事事業が当該事業規模算定期間の直前の事業規模算定期間における非従事事業の事業規模のおおむね五倍を超えない場合を除きます。)

この規定は元々休眠会社の繰越欠損金を利用する租税回避スキームを防止するための措置ですが、租税回避の意図なく他社の株式を購入する場合であっても稀にこの規定が当てはまってしまうケースがあります。
また、上記事由に該当する場合、繰越欠損金が使えなくなるだけではなく、欠損等法人が有する含み損の資産を特定支配日後に譲渡したときの一定の譲渡損も損金不算入となります。
繰越欠損金や含み損のある資産を含む会社の株式を買取る際は、必ずこの規定のチェックをする必要があります。

—————————————————————————————————
豊中市、大阪市、八尾市を中心に活動している坂田直也税理士事務所です。
法人顧問業務はもちろん、事業承継・組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転・現物出資・事業譲渡)などの法人スポット業務や相続対策などの個人スポット業務、足りない部分を補う形でのセカンドオピニオンの対応も可能です。どんなことでもお気軽にご相談ください。