自社(非上場)株式を相続により取得する場合、その自社株についても相続財産となるため、その自社株の評価額が高額となる場合、相続税額が多額になってしまうことがあります。
そのため、その相続税額の負担により会社が傾いてしまうことのない様、納税猶予制度が設けられています。(これを非上場株式等の納税猶予制度といいます。事業承継税制ともいいます。)

この制度の概要は、後継者が、相続等により先代経営者から非上場会社の株式を取得し、一定の要件を満たす場合には、後継者が相続前から既に保有していた議決権株式を含めて、発行済完全議決権株式総数の2/3に達するまでの部分について、課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予できるというものです。

この制度には様々な要件があります。
特に納税猶予を受けてから5年間、雇用の80%を維持しなければならないという要件がこの制度の利用を難しくしていると言われています。
ただ、そもそも、この特例を受ける場合には以下の要件を満たす。

[先代経営者の要件(一部)]
①相続開始前のいずれかの日において会社の代表権を有していたことがあること
②相続の開始直前において、先代経営者及び先代経営者と特別の関係がある者(先代経営者の親族など一定の者)で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、先代経営者が保有する議決権数が後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していた(筆頭株主であった)こと

[後継者の要件(一部)]
①相続開始の直前に役員であったこと (先代経営者が60歳未満で死亡した場合等を除きます。)
②後継者及び後継者と特別の関係がある者(相続人の親族など一定の者)で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなる(筆頭株主となる)こと

つまり、次の場合は要件を満たさないことになります。
①先代経営者の配偶者が自社株を保有し、かつ、その配偶者が今まで代表権を有したことがないときのその配偶者の相続の場合
②持株会社などがあるため、筆頭株主であったことがない先代経営者が自社株を保有している場合
③持株会社などがあるため、先代経営者からの相続分を含めても後継者が筆頭株主になれない場合
④先代経営者が60歳以上で、後継者が部長や工場長などではあるが役員ではない場合

上記のようなパターンの場合はこの特例が使えませんので留意が必要です。
非上場株式等の納税猶予制度は確かに要件が厳しいため、実際に使うことはなかなか難しいかもしれませんが、非上場株式のオーナーは、少なくとも相続時のこの制度については適用することを前提に生前から準備をしておかなければならないと思います。

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