事業承継を考えるにあたって、ほぼ間違いなく役員退職金の話が出てきます。
適正な役員退職金の金額の話や分掌変更など論点は様々ありますが、意外と知られていないのが消費税の論点です。

役員退職金をキャッシュで給付する場合は、当然消費税は関係ないのですが、役員退職金の支給にあたっては、会社の資金繰りを考慮してであったり、退職する役員の老後の生活費の確保、節税対策などの理由により、キャッシュに代えて会社所有の本社や工場などの不動産を給付するということもあります。
この場合に、どういう処理をするかによって消費税が変わってきますので以下まとめておきます。

①役員退職金をキャッシュで給付し、そのお金で不動産の売買をする場合
この場合は単なる不動産の売買ですので、消費税の課税取引となります。
つまり、建物は課税売上、土地は非課税売上となります。
この処理の場合、会社の非課税売上が大きくなることが想定されますので、何もしなければ課税売上割合が大きく減少し、消費税納税額が増加する可能性が高いですので、必ず「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」の提出を検討する必要があります。

②役員退職金として、不動産を現物給付する場合
この場合、退職金としての不動産の現物給付は「対価を得て行われる資産の譲渡」には当たらず、消費税の課税対象とはなりません
ですので、建物も課税売上にはならず、土地も非課税売上とはなりません。
ただし、初めにキャッシュで給付すると決めたものを後からキャッシュに代わりに不動産で給付するとしてしまうと「代物弁済」となってしまいますので、課税の対象となってしまうことに注意が必要です。
(消費税法2条①八、消費税法基本通達5-1-2、5-1-4)

上記②にする場合、具体的には、
1.役員退職金の決議に係る株主総会で「現物で給付する」旨の決議をする
2.不動産の所有権移転登記にあたり、原因は「退職慰労金の給付」とする
と処理しておく方が良いかと思います。

最終的に役員個人に不動産を移転させるという結果は同じですが、税金は大きく変わります。
役員退職金は金額が大きくなりがちで、動かす不動産も大きくなりがちですので、注意が必要です。

今後、数年間は経営者など役員の退職に伴う退職金の支給が増えてくると思います。
役員退職金に関することで話を聞いてみたいなど、スポットでのご相談もお気軽に弊社までご連絡ください。

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