平成29年度税制改正で、相続税の財産評価における「広大地」が「地積規模の大きな宅地」に変わりました。
「地積規模の大きな宅地」は従前の「広大地」と比べて、大きく2つの点で変わりました。

1つ目は、適用要件が変わったこと
2つ目は、評価方法が変わったこと

です。

まず、適用要件についてですが、従前の「広大地」に該当するための要件は次のとおりでした。
①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であること
②開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの
③大規模工場用地に該当しないもの
④マンション適地でないもの

これらの要件は、例えば
「その地域」とはどこまでをいうのか?
「公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」なのかをどう判断すればよいのか?(路地状開発可能か否かなど)
「マンション適地」なのかをどう判断するのか?
など実務上判断に迷うものが多くありました。

これに対し、改正後の「地積規模の大きな宅地」に該当するための要件は次のとおりです。
①三大都市圏においては500 ㎡以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000 ㎡以上の地積の宅地
②市街化調整区域(開発行為ができる区域を除く)でない
③地域地区が工業専用地域でない(普通商業地区・併用住宅地区及び住宅地区に所在)
④指定容積率が400%(東京都の一部は300%)以上の地域でない

このように改正後の要件は従前に比べて判断基準がわかりやすくなっています。

この改正により、例えば次のような土地は、従前の「広大地」には該当しませんでしたが、改正後の「地積規模の大きな宅地」には該当することとなります。
①幹線道路沿いの大規模店舗の敷地など、現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地
②開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要でない土地(路地状開発可能な土地など)
③マンション適地である土地

逆に、例えば次のような土地は、従前の「広大地」には該当する可能性がありましたが、改正後の「地積規模の大きな宅地」には該当しなくなりますので注意が必要です。
①都道府県等の条例により、開発許可面積基準を別に定めている場合で、その面積が500㎡未満である場合(大阪府下では例えば八尾市・泉大津市・門真市・寝屋川市・摂津市などは開発許可面積基準が300㎡以上となっています)
②工業専用地域にある宅地で大規模工場用地に該当しない土地
③指定容積率は400%(東京都の一部は300%)以上であるが、基準容積率が低い(前面道路幅の狭い)土地

「地積規模の大きな宅地」に改正されるのは、平成30年1月1日以降の相続・贈与からです。
つまり、平成29年中の贈与であれば、従前の「広大地」による評価が使えることになります。
上記のように、改正後の「地積規模の大きな宅地」には該当しなくなるような土地については、平成29年中に、例えば精算課税制度による生前贈与などを検討する必要があります。

ただし、生前贈与をする場合は、①登録免許税や不動産取得税などの流通税が相続による取得に比べて高額になる ②小規模宅地等の評価減の特例を使う予定である土地の場合は、生前贈与をすると使えなくなる などのデメリットもあるので注意が必要です。

—————————————————————————————————
豊中市、大阪市、八尾市を中心に活動している税理士法人ライトハンドです。
法人顧問業務はもちろん、事業承継・組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転・現物出資・事業譲渡)などの法人スポット業務や相続対策などの個人スポット業務、足りない部分を補う形でのセカンドオピニオンの対応も可能です。どんなことでもお気軽にご相談ください。