平成28年度税制改正大綱において、平成28年4月1日以後に事業者が高額資産(注1)を取得した場合に取得後2年間は免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けることができなくなることとなる予定です。

今回の改正の背景には、不動産(建物)を購入する際、特別目的会社(SPC)を使う消費税の還付スキームや、平成22年度税制改正でいわゆる自販機スキームを防止するためにできた法制度をあえて外すために事前に法人を設立し課税事業者の状態で2年間据え置くことによる消費税の還付スキームなど、本来の消費税の立法趣旨から大きく外れるスキームを使う節税が横行していることがあります。
上記のようなスキームを封じるため、簡易課税制度を選択していない課税事業者が、高額資産の仕入れ等を行った場合には、その仕入れ等を行った日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けることができなくなります。

問題なのは、今回の改正の対象が特別目的会社(SPC)に限定されておらず、一般の中小法人等が機械装置等の高額資産を取得した場合にも適用されることとなる点です。 消費税の還付が目的でない資産の取得の場合であってもこの改正に該当してしまい思わぬ消費税の納付が発生してしまう場合があります。 例えば、以下のようなケースの場合は注意する必要があります。

1.翌期以降2年以内に免税事業者又は簡易課税適用事業者になる予定である者が商品(棚卸資産)として高額資産を取得するケース

2.翌期以降2年以内に免税事業者又は簡易課税適用事業者になる予定である者が当期に本則課税にて不動産や設備投資等の高額資産を取得するケース

など

上記のケースに当てはまる場合はあまりないとは思いますが、例えば、居住用不動産の賃貸や土地の売買もしている不動産業や医療・薬業のように非課税売上と課税売上が混在している場合や、新たに子会社などの関連会社を設立して事業を開始する場合等で、設立1期目・2期目の課税売上が少なく、3期目以降に大きく課税売上が計上される場合などは、基準期間の課税売上高が少なくなる場合もあり翌期以降に免税事業者又は簡易課税適用事業者になる予定でありながら高額資産を取得するというケースに当てはまる可能性があると思います。
あまりないケースであるからこそ注意する必要があると思います。

今後、高額資産を取得する場合は、消費税に関する納税義務の判定や納付税額の有利判定を考えて、取得の時期なども含め今まで以上に慎重な判断が求められます。

(注1)高額資産とは、1取引単位の価額が税抜1千万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。

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